日記
嫌な空気を吸っては吐いて、嫌な役回りだった、なんて俯瞰して今日も終わった。
台本の無い1日に憧れて大人になった。
時は流れる、なんて表現をするけれど流れは勢いを増すどころか犯した過ちと後悔を数える暇も無くすほどに淀みを蔑んで過去になった。
終電間近の車内はアルコールの艶やかさを剝ぎ取って、吐き気を催す嫌悪の渦で僕を取り巻いた。
ああ、大人って汚いな。それだけの感想でしかなかった。
大人だから、大人になったから、そうやって周りの人間を見下して生きることのほうが楽だった。全部。全部。全部、全部、全部、アイツはガキだから。
夜、月がぼんやり輝く空を見上げて無敵になったつもりになれば、自信なさげに微笑むあの子の笑顔がより一層手の届く場所にいるような気がした。伸ばした手が月光に揺られて、白く輝いた。
明日の夢は、少しでも現実味を帯びてセリフのあるものであればいい。
白く、台本の無い脚本が、明日を綺麗な言葉で拙くとも美しく、儚く照らしますように。流れる血がより鮮やかでありますように。
混色
コデインの量ばかり増える。
肝臓も脳も溶かしていく感覚の分だけ多幸感を得る。
昼起きて、数時間の快楽のために何十錠も飲み込んで、夜中眠る頃に離脱症状だけ残る。
わたしは何の為に幸福を得ている?
思っていることが上手く言葉に出せない。
誰よりも思考を凝らして、誰よりも自分の首絞めて鬱を脈打っているのに、内から外に出そうとすると引っかかる。
綺麗な言葉じゃなくていい、そう知っているのに外に出す前に糸が糸を成す前のように絡まって、曖昧な答えになる。
本当は快楽よりも幸よりも、ただ有るだけの文字を意味にしたい。
意味に意味を成すものも傷にしかならない。どうして?
採った価値でしか花が咲かないのなら、どれだけ奪って枯れれば、記憶に残るのだろう。
涙も枯れたわたしには、奪ったものに価値を見出す資格もないのだろうか。
寒さは感じれど温もりは感じない温度計、あなたの温もりも計った気になって、空っぽに期待している。
重ねても暖かくない人肌、信じていたよ。
わたしが先走っていただけ?
本当の温もりを感じた冬、見てみたかった。
結局また全部伝えられなかった、そうだよ。
熱帯魚
「みんな死ねばいい」という言葉を僕は美化して「地球が滅亡すればいいのに」って言う。
最低最悪な言葉を最低最悪な僕は綺麗な言葉にして、
そして毎日繰り返す何も変えられなかった今日を正当化して日が落ちた。
でも日が落ちただけであって夜はもう来ない。
僕に夜はもう越せない。
でも地球が滅亡して皆等しく骨になって砂になって還る。
そうじゃなきゃ、そうでもしなければ、
僕はどう生きればいい?
放課後に失くした栞を一緒に探してくれた親友も、
コンビニのレジのバイトの誤差を後輩にミスにしていた先輩も、
今も世界のどこかで戦争を指揮して大量虐殺をしている彼らも、皆平等に砂になるんだ。
こんなにも平和な事って他にあるだろうか
───いや全部幼稚な妄想だね、知っています。
今まで生きてきた人生、何も達成出来ずに中途半端に挫折して、諦めて続かない事ばかりだったのに
「怠けて人様に迷惑をかけて生きること」だけが僕が唯一続けられている皮肉。
でも間違うことでしか人生の過ちに気が付くことが出来ないのに、気が付いた時にはもう手遅れで、
それでも今でもあの時の選択肢に正解があったかもわからない。
ただただ親の世間体と高い学費で敷かれたレールを走っていただけ、踏み外したときには僕は僕を救うことが出来なかった。
救われたことがないから、救い方もわかりませんでした。
これも言い訳かもしれない。
レールに乗っていた僕はいつも目を開けないように、聞こえないように、「悪」と誰かが決めたものは見て見ぬふりをしていた。
地球が規則正しく自転している、その原理すらも知らないまま僕もそのまま大人になった。中身のない人間、僕が1番なりたくなかったもの。
自分を守るためについた嘘が知らないうちにもう1人の自分を生んで僕に似た彼は僕の代わりにこの世界の面倒臭いこととか、悲しいこととか、嬉しいこととか、上手く取り繕って生きている。
嘘に嘘を塗り重ねて、嘘は本当になった、そう信じてる。
信じているものはいつだってその時の正解だから。
でももう誰も僕のことは知らない。知らなくていい。
僕の模造品だったはずの彼が独り歩きして、
ちょっとはマシな人間に擬態しているから、
でもそれでも何も世界は変わらないから、
これが正解だったに違いない。
「なあそうだろ?」
「君が思うならそうだよ。」
夏を知らないままもうとっくに夏は溶けて、
秋も通り過ぎて冬になる。いつもそうだ。
決まって冬は来るのに春も夏も秋も来ない。
僕は冬が好きだからそれでいいのかもしれないけれど、あの日見た花火をもう一度見たかった。
窓から入る冷たい空気で鼻がツンとする。
夏らしいことなんて何もしなかったな。
いつかきっと僕にも夏が来るのだろうか。
机に置かれた40センチの水槽の中で、
ゆらゆらと泳ぐ熱帯魚が今日はやけに綺麗に見えた。
毎日温かい水槽で泳ぐ彼らはきっと毎日夏みたいなものだから、
僕と逆行していつか来る冬を待ち望んでいるのだろうか。
冷たい水温で、彼らは生きていくことも出来ないのに。
「なあ今年も冬は来たよ」
答えはなかった。
水面張力
勝手に注がれたコップの水面張力で溢れそうで溢れないような 恐怖 の中で生きてる
割れたガラスを握るゆめを見た
包帯を巻いてくれるような人が欲しかった
──────それだけ
頑張ってきたんだね なんて薄い言葉は ぜったいに最低最悪なんだ
わたしのさざなみを勝手にあなたの尺度で値踏みしないで欲しい
あなたの目で見たわたしを都合よく思い出にしないで欲しい
でもせめて、
その思い出があなたを苦しめていますように
明日は誰が死にますか 流れた命
流した命で命の等価交換をしましょう
誰かの明日を幸せに、なんてありきたりな
綺麗事は言いたくなかったけど、
悲しいことはいくらでも与えてもいいけれど、自分の救い方くらいは教えて欲しかったな、神様。
涙の拭い方もわからぬまま。
大好きな街でわたしのエンドロールを流したけれど誰も聞いてくれませんでした
でもそれで良かったよ、さようなら
青二才
18歳までには死ぬはずだったのにのうのうと、脳々と、生きている、笑っちゃう。
大好きだった本も鬱になってから全く読めなくなってしまったけれど、完全自殺マニュアルだけは読めたよ。
なんとなくまだ未熟な子供のまま、世間からはまだ若いのに、なんて思われて、死んだら綺麗だと思ったのに。ほら、静脈になれなかったろって君が笑ってんだ。ゆらゆら踊って、失くした片耳のピアス探してる残像、追いかけたまま。
結局死にきれずに周りに迷惑だけ掛けて生きてるね、早く死ね、毎日生きてる方が砂利噛んでること、証明され続けてるの気付いてない?許されてえ、のにいつのまにか自分からガソリン撒いてたんだ。
ふつふつと湧いてる狂気、叫びたいけど気が付いたら勝手に昇華しててモヤってしてる生ぬるいものだけ飲み込んでるよ。
カミソリの切れ味とつるりと走る痛みを知る人はいつか誰かに愛されたいと願った人だから、一人ぼっちの悲しみも1人前に味わえずに涙流していたんだね、昨日の手紙読んだよ。青二才、今年も優しい人が死ぬ世界。
3年前に自殺未遂をしたあの日から毎日毎日越えられない夜を過ごしている事、誰か知ってたかな。DXMの量ミスって幻覚止まらなくてベランダの手摺に手をかけたあの日も、ハイプで記憶飛ばして毎日のようにキャスしてたあの日も、酒と薬で記憶飛ばして渋谷と池袋はしごして援交したあの日も、瀉血しすぎて失神して起きたら朝だったあの日も、全部全部お前のせいだよ。精々苦しんで、野垂れ死んでください。生き様は死に様っておしゃいましたよね、神様。
いま、わたしの部屋の引き出しの中に、2箱のエスモカ、ある。1年以上前に買った、最終手段の自殺グッズ兼トランキライザー。
致死量は2箱〜3箱だから死にたくなったらすぐに死ねるんだ〜、3箱で1000円ちょっと。だからわたしの命も1000円ちょっとだね、わたしの生き様1000円ちょっと。それでもわたしの鳴らした口笛、人混みに紛れて掻き消されてるね、ふー。
遺書も書いた。外出先でパッと思い立ったときに死ねるように。これも引き出しにあるから死んだら誰か見つけてね、宝探し。君の卒業アルバム、拡大コピーして燃やしちゃったけど許してね。
思い残すことも無いし遺せるものもないし失うものもない、でも一つだけ。来世でもずっと一緒って言ってくれたの、覚えてるかなあ。その言葉だけで十分でした。でももう十分だよ、全て忘れてください。全てはわたしのせいだし。この言葉が呪いになりませんように。
殺すも生かすも同じ水道の蛇口を捻って水が出るみたいに自然に流れる命なんだ〜、ね。気が付いたらもう芽が腐ってたよ。咲かない種に水あげてた僕、わたし、あなた、君、お前。来世も天国も期待しないから朱色の死に様でぴったり成仏。
関係ないけど屋根の上乗りたいんだ。いつかのあの日約束した思い出と一緒に。手の中で転がしたビー玉と交換したりしてさあ。
口の中が苦くなってきたからサイレース舌下して寝よ、ひとりじゃ寝られないけど。下が青い、アオジタトカゲ。ググってね。マイスリー10mgも一緒に、さようならおやすみ。